うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

山間の小学校は休暇にて…(奥村晃作) @現代短歌の鑑賞101

山間の小学校は休暇にて地球儀ひとつ教卓を占む /奥村晃作 『三齢幼虫』 今、短歌を詠むときにぶち当たっている壁が、「わかりやすさ」だったりする。 そのまま三十一文字をつめても、「はい、そうなのね歌」(杉本苑子『私の万葉集』)になってしまう。他人…

軟水にバラ洗われていたりけり…(佐藤通雅) @現代短歌の鑑賞101

軟水にバラ洗われていたりけり批判書一つ書かんあかつき /佐藤通雅 『薄明の谷』(昭46) 硬度の低い云々…というより、軟水という文字のやさしい感じをもって、早朝に洗われる薔薇。その情景の美しさ。 その一方で、論文をもって何かのテーマを追及していく…

ひじやうなる白痴の僕は自転車屋に…(前川佐美雄) @現代短歌の鑑賞101

ひじやうなる白痴の僕は自転車屋にかうもり傘を修繕にやる /前川佐美雄 『植物祭』(昭和5) モダニズム短歌の代表的な歌人の、代表的な一首。 歌人と歌の「僕」は別として、この「僕」になんとなく親近感を持ってしまう自分がいます。 自転車の車輪と傘の骨…

こおろぎの声ほろびしと思うとき…(玉井清弘) @現代短歌の鑑賞101

こおろぎの声ほろびしと思うとき水みたすごと夕闇はくる /玉井清弘『久露』 玉井清弘さんのうたは、描写は写実的なんだけど、感覚に通じるものがあって大好きです。 このうたもそのひとつ。ふと、こおろぎの声がやんだと気づいたとき、空を見上げたら夕闇が…

喫茶店に音楽家居て抱いている…(棚木恒寿)

喫茶店に音楽家居て抱いているチェロになれないヴァイオリン、他 /棚木恒寿『天の腕』 棚木恒寿さんの『天の腕』より。 世の中の憧れには2種類あって、普通の人が特別になりたいパターンと、変わり者が普通になりたいパターンじゃないかと思う。 掲出歌はき…

青林檎与えしことを唯一の…(河野裕子)@現代短歌の鑑賞101

青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり /河野裕子『森のやうに獣のやうに』 河野裕子さんの『森のやうに獣のやうに』は、出版からもう35年以上も経つのに、まだまだ新鮮な気持ちで、共感をもって読めます。 体当たりの恋の歌。 思いは深まるば…