うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

エンジンのいかれたままをぶつとばす・・・(池田はるみ) @現代短歌の鑑賞101

エンジンのいかれたままをぶつとばす赤兄(あかえ)とポルシェのみ知るこころ 池田はるみ/『奇譚集』H4 世界は意図で満ち溢れている。 ポルシェをぶっとばす快楽に、ふと思惑の影がよぎる。 赤兄…蘇我赤兄の顔は知らないけれど、この名前が出てくることで、…

あたためしミルクがあましいづくにか・・・(大西民子) @現代短歌の鑑賞101

あたためしミルクがあましいづくにか最後の朝餉食(は)む人もゐむ 大西民子/『花溢れゐき』S46 温めたミルクに甘さを感じる、とても穏やかな朝食時。 その時ふと、今日が最後の朝食となる人がいるだろうことを思う。 私が掲出歌を読んだとき思い浮かべた最…

ああ昨日(きぞ)のその場しのぎの優しさが・・・(島田修三) @現代短歌の鑑賞101

ああ昨日(きぞ)のその場しのぎの優しさが深夜電話に化けてまた響(な)る 島田修三/『離騒放吟集』H5 掲出歌を一度読む。そして、もう一度読む。 すると、歌のトーンが変わる。 原因は「ああ」だ。 初めてこの歌を読むときは、「ああ」を詠嘆の「ああ(嗚…

国際化せし東京の胃袋に…(時田則雄) @現代短歌の鑑賞101

国際化せし東京の胃袋に届けむ露に濡れしアスパラ 時田則雄/『十勝劇場』H3 食の国際化。私たちは、たくさんの国の食材を、料理を、食べることができる。 わくわくする。 しかし、そう言われて私たちが想像できるのは、口に入ったところまでなのである。 胃…

さくら花幾春かけて老いゆかん…(馬場あき子) @現代短歌の鑑賞101

さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり 馬場あき子/『桜花伝承』S52 桜の花も老うのだろうか。ふと思った。 老木に咲きほこる桜の美しさ。 その美しさは、何百年千何百年とこの世に根を下ろしているゆえに現世を超越してしまっているような、…