うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

美術展見終えて開く自動ドア・・・(大島史洋) @現代短歌の鑑賞101

美術展見終えて開く自動ドア森の闇より老漁夫は来る 大島史洋/『四隣』H6 初めて読んだ時、なんだか違和感を感じた歌だった。 日常の歌かもしれない。でもなんだか引っかかるのだ。 美術展を見終わり、外に出るため自動ドアの前に立つ。 すると開いたドアの…

師よ弟子に神への祈りを祈らせよ・・・(市原克敏)

師よ弟子に神への祈りを祈らせよ祈りを祈る意味の無意味を 市原克敏/『無限』H16 市原克敏さんの遺歌集『無限』より。 時空を越えた詠みに、圧倒された。 それこそ世界のありようとの「格闘」のような歌集だった。 掲出歌は、「師よ弟子に神への歌を」8首の…

わかるとこに かぎおいといて ゆめですか・・・(今橋愛)

わかるとこに かぎおいといて ゆめですか わたしはわたし あなたのものだ 今橋愛/『O脚の膝』 今橋愛さんの『O脚の膝』より。 少し危うい相聞歌である。 相聞歌というよりも、相聞する相手へ行ってぐるりとUターンして、自らの心に納めてしまった、そんな印…

をさなさははたかりそめの老いに似て・・・(大塚寅彦) @現代短歌の鑑賞101

をさなさははたかりそめの老いに似て春雪かづきゐたるわが髪 大塚寅彦/『刺青天使』S60 髪にかずくほどの雪。 春とはいえ、その日は急に冷え込んで冬に戻った日和だったのかもしれない。(今日みたいに) その雪を白髪に見立て、「かりそめの老い」と詠む若…