うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2013-01-01から1年間の記事一覧

「食卓」(朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」)

12月3日の朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」のコーナーに「食卓」10首を寄稿しました。もし手にする機会がありましたら、読んでいただけたら嬉しいです。

もはや跳ぶほかなきゆゑに此の距離を…(光森裕樹)

もはや跳ぶほかなきゆゑに此の距離を跳べると思ふ 思ふゆゑ、跳ぶ 光森裕樹/『うづまき管だより』H25 説得力を持たせる言葉。 説得力を持たせる無言。 私たちは一見ロジカルに見えるものがあると、なんだか納得できそうな気がする。 この歌は、一字あけの空…

リラ (『短歌研究』11月号)

『短歌研究』11月号「新進気鋭の歌人たち」に「リラ」10首とエッセイ「初めて出会った歌」が掲載されました。もし手にする機会がありましたら、読んでいただけたら嬉しいです。

第56回短歌研究新人賞次席 入選

このたび、第56回短歌研究新人賞の次席に入選しました。 『短歌研究』9月号に「きつね森」30首が掲載されました。もし手にする機会がありましたら、読んでいただけると嬉しいです。 直接的、間接的に、指導・刺激を下さったみなさま、どうもありがとう…

廃線になる日は銀杏のふるさとを…(光森裕樹)

廃線になる日は銀杏のふるさとを囲ふ踏切すべてあがる日 光森裕樹/『鈴を産むひばり』H22 銀杏のふるさとを開け放つ日。 一斉にすべての踏切があがる情景は凜として美しい。 そして、かすかにその情景は、降参して両手を上げる様子と重なる。 ふるさとを延々…

「時評」平成25年1‐6月号

「日本歌人」平成25年1月号から半年間、時評を書きました。 以下、備忘録としてタイトルを記載します。 1月号:詞書をめぐって 2月号:歌集で短歌と出会えるか 3月号:歌にいのりを 4月号:短歌における共感の変化―時代の気分から 5月号:共感の距離感 6月号…

冬ごもる蜂のごとくにある時は…(佐藤佐太郎) @現代短歌の鑑賞101

冬ごもる蜂のごとくにある時は一塊の糖にすがらんとする 佐藤佐太郎/『開冬』S50 蜂は冬を越える。 そんなこと、考えた事もなかった。 花があるから蜂がいる。 そういう相互補完的なイメージで結ばれていたけれど、確かに冬を越さなければ蜂だって命をつなげ…

舞台上いつぱいガラスの破片撒き・・・(山田航)

舞台上いつぱいガラスの破片撒き劇中それにはいつさい触れず 山田航/『さよならバグ・チルドレン』H24 リアルな手触りの怖い歌である。 ガラスの破片というのは、何か破壊的な衝撃を暗示させる。 一体何があったのか? それには一切触れないという。 そして…

一夜きみの髪もて砂の上を引き摺りゆく…(河野愛子) @現代短歌の鑑賞101

一夜きみの髪もて砂の上を引き摺りゆくわれはやぶれたる水仙として 河野愛子/『鳥眉』S52 狂気とは、なんて女性的な衝動で、醜くまた艶めかしいものだろう。 裏切り、嫉妬、別離・・・ 狂気の引き金は、どこにあるかわからない。 普段はそのスイッチが自分自身…

「時空を超えて」

短歌総合新聞『梧葉』vol.37に小文「時空を超えて」が掲載されました。昔の人の恋が現代の私たちに伝わる歌の不思議。もし手にする機会がありましたら、読んでいただけると嬉しいです。

三日三晩鏡にむかひゐし老婆・・・(松平修文)

三日三晩鏡にむかひゐし老婆わかき女として嫁ぎゆく 松平修文/『原始の響き』S58 無意識にのぞき続けられる鏡なんてない。 必ず、鏡は意識した自分自身を映すのだ。 そこで化粧を続ける老婆… この歌のモノガタリの先には、正体を知らないまま娶る男がいる。 …

葉ざくらの記憶かなしむうつ伏せの・・・(中城ふみ子) @現代短歌の鑑賞101

葉ざくらの記憶かなしむうつ伏せのわれの背中はまだ無瑕なり 中城ふみ子/『乳房喪失』S29 二週間ほどの間に私の周りで出産、結婚、逝去すべてが起こった。 めまぐるしい時期が過ぎて仕事に戻り淡々と業務をこなしていると、 儚いものはどちらなのか分からな…