うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

このようになまけていても人生に・・・(山崎方代) @現代短歌の鑑賞101

このようになまけていても人生にもっとも近く詩を書いている 山崎方代/『こんなもんじゃ』 山崎方代さんの『こんなもんじゃ』より。 この歌集は、彼の全短歌から四百十三首を選んだ選歌集。 中は本当におおまかに、家族のうたや年を詠みこんだ歌などテーマに…

雪はくらき空よりひたすらおりてきて・・・(藤井常世) @現代短歌の鑑賞101

雪はくらき空よりひたすらおりてきてつひに言へざりし唇に触る 藤井常世/『草のたてがみ』S55 美しくて悲しい歌である。 雪は空の水蒸気が、結晶を造ってゆっくりと落ちてくるものだ。 空、水蒸気・・・ どれも触れることはできない。 暗ければ見ることすら…

月させば梅樹は黒きひびわれと・・・(森岡貞香) @現代短歌の鑑賞101

月させば梅樹は黒きひびわれとなりてくひこむものか空間に 森岡貞香/『白蛾』S28 夕焼けでこそ人は空を見上げるけれど、その後の夜になるまでの間。 ここで空を見上げる人はどれくらいいるのだろう。 夜になりきらない空の時間。 十五分程度の不思議な時間で…

まつ白い腕が空からのびてくる・・・(加藤克巳) @現代短歌の鑑賞101

まつ白い腕が空からのびてくる抜かれゆく脳髄のけさの快感 加藤克巳/『螺旋階段』S12 誰もが一度は体験している、この朝の目覚めの爽快感。 個性的な表現だけど、一読して、あぁ、あの感じ!とわかる。 この共感度合い。とても73年前の歌とは思えない。 あの…

いくつかのやさしい記憶新宿に・・・(俵万智) @現代短歌の鑑賞101

いくつかのやさしい記憶新宿に「英(ひで)」という店あってなくなる 俵万智/『かぜのてのひら』H3 長年住んでいるときは街の変化なんか全然感じないのに、しばらく離れて帰って来た時の街の変わりようというのは、目を見張るものがある。 なぜだろう。 繁華…

白鳥のねむれる沼を抱きながら・・・(岡井隆) @現代短歌の鑑賞101

白鳥のねむれる沼を抱きながら夜もすがら濃くなりゆくウラン 岡井隆/『ウランと白鳥』H10 夜更けの暗い沼。 そこに、しなやかな首と柔らかい羽根を持った白鳥がたゆたっている。 水面に揺らぐそれは、闇にあっても白く煌々と映えていることだろう。 そんな白…

「正しいことばかり行ふは正しいか」・・・(伊藤一彦) @現代短歌の鑑賞101

「正しいことばかり行ふは正しいか」少年問ふに真向かひてゐつ 伊藤一彦/『海号の歌』H7 む。と言葉に詰まる歌である。 大人には答えがたい、子供の無邪気な質問である。 でも、大人が答えられないのを見越した、子供のしたたかさも垣間見えたりする。 それ…

雪でみがく窓 その部屋のみどりから・・・(坂井修一) @現代短歌の鑑賞101

雪でみがく窓 その部屋のみどりからイエスは離(さか)りニーチェは離る 坂井修一/『ラビュリントスの日々』S61 窓をみがく程の雪。 外は風も強く、とても寒いのだろう。 その一方で、部屋の中は暖かく緑も鮮やかだ。 その温度差で窓は曇ってしまっているは…