うたよむブログ

短歌のこと、読書会のこと

2019-01-01から1年間の記事一覧

この部屋に濃霧立ち込めたる朝の空気清浄機の役立たず/惟任将彦『灰色の図書館』

目に見えないものを疑いもなく信じる私たちを立ち止まらせる歌だ。朝食でパンか何かを焼いていたのだろうか。そのまま忘れてしまい、焦げ臭さが部屋に充満する。 しまった…という朝のひとこまである。そんな部屋にある空気清浄機。 目に見えないものは除去す…

なに聴いているのと聞けばコンクリでおしりがぬくいと目を伏せたまま /初谷むい

音楽というものは、わかり合いにくいものだ。 その曲の魅力について、言葉を尽くせば尽くすほど伝わらない。理解と共感の距離が遠いのだ。 「そっか。あなたはそんなにその曲が好きなのね!」 掲出歌の人物は、それを知ってか知らずか「わたし」の問いに答え…