肌の内に白鳥を飼うこの人は・・・(佐々木幸綱)
肌の内に白鳥を飼うこの人は押さえられしかしおりおり羽ぶく
佐々木幸綱
こんなにも女性をしなやかに表現した歌ってあるだろうか。
「羽ぶく」というその動き、羽の柔らかなイメージで、白いしなやかな肌をもって美しくあがく女性の様子が伝わってくる。
ところで、この歌で押さえるのは男性、押さえられるのは女性だ。
最近あまりこういう、男女の明確な立ち位置を表した歌をみないと思う。
魅力的な相問歌はあるけれど、例えば作者がわからなかったら、男女どちらの歌かわからないのも多い。
例えば「抱く」という表現。
「抱かれる」という表現を男性の歌で見つけるとちょっと不思議な気持ちになる。
昔は女性の受動的な愛の表現が、男性にも流れ込んでいるのだと思う。
少なくとも時代によって言葉のポジション、男女の立ち位置、いろいろ変わってきているのだなと、この歌を久しぶりに読んであらためて感じた。
しかし、春日井健さんの歌とは大分位相が違うけど、やはり両極の歌というのは美しい。
それが殊と男女の歌になると、美しさもなおさらだ。